遺言書を作成するときに注意すべきポイントとは?
2017年7月27日
遺言書を作成するとき、注意しておかないと思わぬトラブルを招く場合があります。
今回は、遺言に関して理解しておくべきポイントをご紹介します。
遺言の種類を理解する
遺言の種類 | 特徴 |
自筆証書遺言 | 遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自筆し、署名の下に押印して作成 ● 長所:非常に簡単に作成ができる/作成時の費用が安価 ▲ 短所:各項目において、方式を厳格に守らないと遺言自体が無効になる(例:ワープロを用いた場合は無効) 家庭裁判所による検認作業が必要/遺言書が盗難の被害にあったり紛失したりする可能性がある |
公正証書遺言 | 遺言者が証人2人とともに公証(人)役場に行って作成(外出できない場合は公証人が出張) ● 長所:文字が書けない人でも作成可能 原本が公証(人)役場に保管されるので保管面では最も確実/家庭裁判所による検認作業が不要 ▲ 短所:証人が必要のため、内容を秘密にしておけない 遺産価額や内容に応じて公証人の手数料が決まるので、遺産が多いほど費用がかかる |
秘密証書遺言 | 遺言そのものの方式ではなく、遺言書を秘密に保管するための方式 (遺言書が封入されていることを公正証書の手続きで公証しておくというもの) 証人2人の立会の下で、この封書を公証人に提出して、これが自分の遺言書であること、証書を書いたものの氏名・住所を申述 ● 長所:書面の作成が容易/公証人の手数料が安価/全文を自筆する必要がない 証人に遺言内容の秘密が保たれる ▲ 短所:保管に注意してなければならない(遺言者保存) 内容については公証人が点検しないため、無効になるおそれがある 家庭裁判所による検認作業が必要 |
上記の遺言の内「公正証書遺言」は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言ですので最も安全かつ確実性の高い遺言書です。
また、遺言の執行が迅速行えるというメリットもありますので、遺言書は「公正証書遺言」で作成することをお勧めします。
遺留分を理解する
遺留分とは、民法で定められている兄弟姉妹以外の法定相続人が最低限相続できる財産のことです。
被相続人は、遺言などの意思表示により相続財産を自由に処分することができますが、
遺される家族が経済的な基盤を失わないようにと、この制度が設けられています。
遺留分についての詳細はこちらをご確認ください。 >> 相続対策 Vol.16 ? 「遺留分とは?」
例えば、被相続人が特定の相続人に多くの財産を残したいと考えている場合、遺言書を作成していればそれが原則可能となります。
ただし、上記の遺留分はその他の法定相続人が最低限相続できる財産(遺留分)を確保できるよう法律で定められていますので、
遺言書と遺留分の内容に相違があると、相続人同士でトラブルが起こってしまうことも容易に想像できるでしょう。
上記の様なトラブルを避けるために、被相続人は以下の2つの対策をとっておくことをお勧めします。
1)付言事項を遺言書に追記する
遺言書に「付言事項」として、特定の相続人に多くの財産を残す旨を明記し意志表示を明らかにしておく
付言事項は法的な拘束力はありませんが、被相続人の意思表示を確認することが出来るため、トラブルの回避が期待できます。
「付言事項」の記載例(画像をクリックすると拡大されます。)
2)生命保険を活用する
例えば、生命保険の受取人を多くの財産を遺しておきたい特定の相続人にしておくことで、遺留分の代替としての価額弁償を確保することができます。
《価額弁償の活用例》
会社経営をしている被相続人が「後を継ぐ長男に出来るだけ多くの財産を残したい」という事例です。
法定相続人は長男と長女の2名です。
相続財産の総額は1億6千万円で、そのほとんどは土地・建物・自社株ですが、そもそもこれらは分けることが現実的に困難な財産です。
また、唯一のキャッシュである1千万円は、相続税を考えるとこちらも全て長男に相続したいと被相続人は考えます。
長女の法定相続分は1億6千万円の半分である8千万円ですが、遺言で財産の多くを長男に譲る旨を記したとしても、遺留分により最低でも長女は4千万円を受け取る権利があります。
このような時に、生命保険を活用した「価額弁償」で問題解決をした例が以下の図の様になります。
・死亡保険金8千万円は、長男が受け取ります。
↓
・長男は、長女が本来受け取るべき法定相続分の8千万円を死亡保険金から全て長女に渡します。
生命保険金は受取人固有の財産になりますので、長女の法定相続分の金額を価額弁償として予め確保しておくことで、トラブルなく円滑に相続を行うことが可能となります。
ポイント1:生命保険金は受取人固有の財産である
ポイント2:死亡保険金の受取人を「長男」にしておく
ポイント3:生命保険金の受取人は、相続人の範囲内で自由に設定できる為、相続税などを考え余裕を見て保険金額を設定する
上記の様なケースでは、発行した会社自身が自社株を買い取る「金庫株」という手法もあります。
相続や遺留分などについて、ご不明な点は当社までお気軽にご相談ください。
※2017年2月1日現在の税制・法令等に基づいており、今後の税制・法令改正等により内容が変更になる場合があります。
また、個別具体的な税務の取扱いについては、関与税理士または所轄の税務署にご相談下さい。